Nov 1, 2025

Group show

 



『Photographs』

忘れかけの記憶というか、消えていく夢というか、たとえば被写体をうまく写すことも重要ですが、わたしはずっとそこに在るかのような空気に、反応することの方が大事です。

二眼レフの正方形ファインダーを覗きながら、近くで見ているのに遠い印象、鮮明だけどおぼろげな光景、そういったものを写し撮ることができるなら、それは原型をとどめない程にシャッターを切る多重露光ではないか、と繰り返しました。

考えてみると、対象となる傷や錆や罅、黴、擦れ、汚れ、剥げ、染み、凹み、不気味な痕跡、不思議な実在感、ボロい色の隙間と奥行きの空間、虚ろに見えるのも、ある感情が湧きおこり枯れていった、余韻なのかもしれません。

撮影したフィルムはモノクロ現像の方法でネガもポジもカラーもモノクロも全てをいかに混ぜるか、失敗も含め曖昧なイメージを写真にしたいと単純に思います。また乾燥したフィルムは漂白し擦って剥がし溶け出し混じり合った写真の現象を、手探り状態で前後左右上下表裏概念なくデジタルデータに変換します。

そこにはフィルムをデータ化する過程で、変化する瞬間、変化しつつ凝固したと考えるしかないと、同時にそれは自意識の変化も生じるべきものです。そう簡単に自意識や無意識はコントロールできませんが、そういった意識の変化の上で、また一枚の写真に向きあう瞬間、確かにリアルに在ったあの空気が、何か、幻を見せられているようで、そわそわします。

森川健人


お近くにお越しの際は、ぜひご高覧ください。 

会場:RECTO VERSO GALLERY

【展示内容/インクジェットプリント、カラー