The Works of Kento Morikawa -Lucien Deux (2016)
255×215mm/本編142項/写真点数90点/上製本
2016年刊行.33STUDIO BOOKS.
ISBN978-4-907485-04-7/Edition.200
2024年制作/Edition of 1(Cover + Collage)
※フランス・パリの路上で撮影した自身二作目。2013年にZINEとして刊行した『LUCK OF LUCIEN』の続編です。前作はパリ・バンリュー(郊外)で撮影しました。今作では移民街特有のケバケバしい町並みとザワザワとざわめくような感覚を、通りすがりのスナップショットで写しました。他にも前作までと異なる点は、これまでは意識的に省いていた、風景の中に人が一杯写り込んだカットも収録しています。
「パリへは高校生のころ幼馴染の友人と二人、大人に誘われるがまま10日ほど学校をサボって旅をしたのが初めでした。その時が国際線に乗った最初の旅でもありました。当時憧れでも特別興味があった都市でもなかったけど、その後も何度か歩いています。昨年ドイツの旅の最中、いきなりあの時分の感覚が鮮明に蘇り、何十年も経ち昔訪れた場所を無性に写真にしたくなって渡航してみました。形(写真)にすることで、予想外の発見とこんな程度だったかと残念な気持ちとを同時に味わうこともあります。
そして、この旅の帰国当日シャルル・ド・ゴール空港を昼の便で発ち、その8時間後にあの同時多発テロが起こったことは、大阪に着き乗り継いだ南海線で知りました。その瞬間、身の毛がよだち真っ先に浮かんだのは、サン・ドニはサン・ドニでもパリ市内10区のストラスブール=サン=ドニ駅周辺で昼間っからズーと暇そうにたむろしていた大勢のアフリカ系の人たちのシルエットや、移民街シャトー・ドー駅前のお世話になったアラブ人宿の主人と小さな声の掃除のオバさんの顔……彼等の現在の表情を想像しました。
分らないまま、決めつけも出来ない……あれから何度も歩いてみたけどピタリと着地しません。目の当たりにしたゴミだらけの路上でこれまでのことが一寸だけ蘇り、様々な思いも溜め込んでまた新たな気分になります。そして歩き廻ってその土地の空気を封印したフィルムが残り、多くの光景が心に溜まった旅の感覚は、あの時から今も続いているようです。」(「あとがき」より)