Mar 3, 2020

『MOSQUITO PAPER』

発端は、昨年春から取りかかっていたインドのオールドデリーで撮影した断片がなんとなく写真集として全体像が見えてきた昨夏の終り、「写真」とはまったく関係のない場所で生活する故郷の母が倒れました。

私はそれから、看病、見舞いに右往左往する中、いまこのタイミング「インドじゃないぞ、ニシナリだ」と直感で急遽方向転換しました。 ジワジワと重篤な病気の母を安易に受け入れ難く心の整理もつかないまま、いま自分のいる場所、暮らす街を本にして、一瞬でもいいから最後見て欲しかったのです。

大阪の西成で暮らしはじめて五年目、いまもわからないまま続いていく写真への旅、日々を写して残ったいくつかのフィルムの膜にポツッと一点穴が開いたような感じがしました。 時間、場所、感情、匂い、すべてを混ぜ、感覚の赴くまま、いまを束にしてみたい、そこに思索なんていらない、この本は私の欲で衝動でいいと、思いました。


残念ながら晩秋この世を去った母に見て貰うことは、叶わなかったけど、いまも誰にも何も頼まれないのに「つくること」、次の作業に思いを巡らせている私に、母はきっとあきれているでしょう。 2年ぶり通算11作目の写真集は、大阪・西成区の生活と密着する風景の断片からセレクションして、時間軸上に並べることでしか見えてこない流れを編んだ写真集です。